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揺れる紙とメッセージ(岐阜新聞コラム「素描」#3)

伊奈波神社にお参りに行った時、イノシシの親子が山から下りてきているのを見かけました。自宅の近所でアマガエルの声を聞かなくなった、ということもありました。昨年、口蹄疫で牛がたくさん殺処分され、直接は関わりがないものの、胸が痛む気持ちがしました。
そんな中、池田町にある極小美術館で個展(3月31日まで開催)をすることになり下見に行くと「クマ出没注意」の看板があり、その時は全国的にクマの被害が発生した時と重なっていました。
人間だけが悪いわけではないと思いますが、私たちは自然に生かされていることにもっと耳をかたむけた方がいいと思い、「Message from animals 2010」の一連のポスターを仕上げました。
美術館の辺りは池田山のふもとのなだらかな斜面に茶畑が広がっています。温泉やハンググライダーの施設もあり、自然に恵まれた環境です。
今回の展示は額に入れず、四隅をピンで固定しようと考えていました。しかし美術館の代表の長澤さんは、「上2ヵ所を留めて垂らし、紙ならではの反りを自然にまかせた方がよい。何よりも紙らしいし、近くを通った時揺れるのがいい。」とアドバイスをくださいました。私もそれがこの美術館と似合うと思い、そのようにしました。
環境保護が問題となっている今、紙をたくさん使って「自然」をテーマとした作品を作ることに矛盾を感じてはいますが、紙という媒体はとても便利で今までの経験の蓄積があるので、作る方も見る方もそれに甘えてしまっています。自然への感謝をもちながら、これからの作品のあり方を考えていきたいと思います。

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